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再生可能エネルギーから生み出される熱の重要性を提言―国際エネルギー機関(IEA)

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14 5月 2018

冬の気温が急速に低下する北半球では、暖房と給湯を目的とした再生可能エネルギー由来の熱の利用が既に始まっています。とはいえ、世界の熱源の4分の3以上を占める化石燃料に追いつくには程遠く、大量のCO2が排出され続け、地域の大気汚染が悪化しているケースも見られます。

バイオマス、太陽熱、地熱をはじめとする再生可能エネルギー由来の熱は、化石燃料より格段に持続可能性が高い反面、経済性など、多くの課題に直面しているのが現状です。多くの国が再生可能エネルギー由来の電力を重点政策としている一方、熱にはあまり関心を持っていません。

世界の最終エネルギー消費量の50%以上を占める熱は、CO2の排出削減に膨大な余地を残しています。空間や水を温めるだけでなく、さまざまな産業用途においても熱は極めて重要であるにもかかわらず、再生可能エネルギー由来の熱はエネルギー政策における「眠れる巨人」のまま、いまだに目を覚ましていないのです。

一部の国が熱供給の炭素削減を先駆けて進めるなど、明るいニュースもあります。例えばデンマークでは熱の50%が再生可能な熱源によるものです。再生可能な熱源への転換が成功している理由としては、数十年にわたって公共の地域熱供給ネットワークが広く整備されてきたこと、再生可能エネルギーへの転換を長期にわたって推進する積極的な姿勢などが挙げられます。

こうした国々では、地域熱供給システムに接続されていない建物や産業プロセスでも再生可能エネルギー由来の熱の利用が増えています。再生可能エネルギーへの転換を支援する主な政策としては、炭素税やインフラへの投資に対しての補助などがあり、規制と併用されているケースも多く見られます。デンマークでは特定の種類の建物で化石燃料による熱供給を制限しています。

北欧だけではなく、中国、フランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどでも、地域熱供給ネットワークの整備が徐々に進むとともに、再生可能な熱源への移行による炭素削減が推進されています。

天然ガスの供給網が整備されている国では、転換が難航しがちです。課題を乗り越えるため、建築基準法で再生可能エネルギー由来の熱の利用を義務づけたり、金銭的なインセンティブを設けるなど、さまざまな政策手段がとられています。そうした意味で、地域のエネルギー供給事業者が積極的に再生可能熱の目標を設定し、転換の大きな原動力になる場合があります。例えばパリやミュンヘンでこうした取り組みが進んでいます。

熱政策へのアプローチは、既存のインフラや再生可能エネルギー資源の状況によって、当然国ごとに異なります。大半の国では、有機廃棄物によるバイオガスの熱利用などのno-regrets対策(既存の市場メカニズムのもとで実施できるような対策)が取り入れられるようになるでしょう。こうした対策はすぐに実施でき、さまざまなメリットも期待されます。

政策上の選択肢にかかわらず、クリーンエネルギーへの移行を長期的に進め、世界的なCO2排出削減目標を達成するためには、再生可能エネルギー由来の熱の利用を加速させなければなりません。政策立案者はもっと熱に注目し、長期的な目標、エネルギー効率化と包括的なアプローチ、再生可能エネルギー導入を阻害する要因をターゲットとした効果的な政策を打ち立てる必要があります。正しい戦略や政策があってこそ、建物や産業におけるクリーン・ヒートへの移行を軌道に乗せることができるのです。

英文原稿: https://stateofgreen.com/en/profiles/state-of-green/news/iea-more-policy-attention-is-needed-for-renewable-heat

ご参考: 日本語版デンマーク地域熱供給白書 http://stateofgreen.com/files/download/12788